筋肉から出るマイオカインが認知症を予防

骨格筋を鍛えることで分泌されるさまざまなホルモン類似物質の総称マイオカイン。筋肉を鍛えると、その分泌が増えて、認知機能を改善させたり、アルツハイマー病を予防したり、うつ病やストレスの緩和にも有益であることがわかってきています。

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アディポネクチンはストレス緩和、うつ病の予防

認知機能を改善するために有益なアディポネクチンも筋肉を鍛えると分泌されることがわかっています。筋肉そのものが内分泌器官のようにさまざまなホルモン類似の物質を分泌しているのです。アディポネクチンのほかにも、認知機能を改善させるアイリシンというマイオカインを分泌しています。これらはすべて、筋肉を鍛えることで分泌が増えるのです。

筋肉から分泌されるホルモンをマイオカインと呼称しだしたのは2005年のコペンハーゲン大学のベデルセン博士が筋肉からホルモンが出ていることを発見したことがきっかけです。マイオは筋肉を意味し、カインは作動因子を意味する言葉なのです。黒柳徹子さんは83歳にして毎日50回のヒンズースクワットを欠かさないそうですが、このような筋肉の鍛錬でマイオカインが分泌されてアンチエイジングがなされるのです。

筋肉を鍛えて出るマイオカインは脳機能を高め癌も予防

マイオカインには、脳機能を高めるもののほか、癌を予防することがわかっているものもあります。SPARCというマイオカインは大腸がん予防に働いているのです。その作用は大腸がんの癌細胞をアポトーシス(自殺)させるというものです。こうした癌予防の仕組みはいまだ未解明なところも多いですが、少なくとも13種類の癌について、筋肉が増えると癌の増殖が抑制される可能性があることが判明しているのです。マイオカインはお金をかけずに自前で分泌できる夢の万能ホルモンのようです。スクワットができないなら、ビルなどの階段を下りるだけでも筋肉は鍛えられます。格闘技の蹴りの動きなども大臀筋や中臀筋を鍛えてくれます。大事なことは運動をしない人は毎日動くように工夫することです。

スクワットや腕立てのほか、階段の昇り降りだけでも筋肉は鍛えられる

マイオカインはどの筋肉を鍛えても分泌されるものですから、スクワットや腕立て伏せなどの簡単なものでもよいのです。もし、腰痛や膝痛のために、下半身の運動は困難というのであれば、ダンベル体操などで上半身の筋肉を鍛えても、マイオカインの恩恵を授かることはできるということです。軽いスクワットや階段の昇り降りのような運動でも、筋肉は鍛えられるので、こうした運動を続けるだけでも、マイオカインを増やして、脳機能を若返らせることはできるといえるでしょう。

もちろん、アルツハイマー病が本格的に進行したものが、運動や筋トレで治るかといえば、それは難しいのではなかろうかと思います。というのも、あるアルツハイマー病の女性は、認知症のために一日中、そこらを徘徊して歩きまわりますが、その運動量はかなりのものであるにもかかわらず、それでアルツハイマー病の改善がみられるわけではないのです。しかし、もしかしたら、進行は緩やかになっている可能性もあります。今後の研究に期待したいものです。

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