脳には、何歳からでも記憶力を向上させる機能が備わっていることがわかっています。
脳は、目から飛び込んできた情報や耳からの情報、そのほか五感を通じて
入ってくる刺激は、脳のそれぞれの刺激の担当部位で情報処理され、海馬に送られます。
海馬は脳の奥にあり、海馬に保存された情報は80分から長くても三日、保たれます。
その中で重要な情報が大脳皮質に送られ、長期保存記憶になります。
海馬はパソコンのメモリーで、大脳皮質はハードディスクに相当します。
目次
短気記憶と長期記憶、意味記憶とエピソード記憶
海馬に一次保存されるのが、短期記憶です。これよりも短いものが作業記憶というもので、
これは一瞬で忘れ去るような記憶です。電話をかけるときに番号を覚えるようなものが
作業記憶です。そして、海馬の情報が大脳皮質に送られ長期保存されるものが長期記憶です。
そして、長期記憶には、意味記憶とエピソード記憶があり、公式や英単語などは意味記憶です。
意味記憶のほうが忘れやすく、エピソード記憶は忘れにくい性質を持っています。
人の名前をすぐに忘れるのは、名前は意味記憶だからです。
しかし、エピソード記憶を活用して、記憶力を高めることができます。
人に会ったときの服装、出来事、状況、顔の特徴、会話などのエピソードを
名前と関連させて覚えると忘れにくくなります。
語学の学習などもこのようなエピソード記憶をうまく取り込むと覚えやすくなります。
エピソード記憶を使って記憶すれば記憶力は高められる
脳内に蓄積された情報を集積したものをマインド・セットと呼びますが、
これは情報をホログラムのように結び付けている仮想空間のようなもので、
情動つまり喜びや悲しみや怒りや驚きなどの喜怒哀楽の感情の動きがあると、
マインド・セットを更新する上書きが行われます。
この情報の更新は、主に睡眠中に行われています。
睡眠中は、外界からの刺激が遮断されるので、海馬の短期保存の記憶を、
大脳皮質に送り込んで、上書きの作業が行われています。
100歳の美しい脳、ノートルダム教育修道女会678名の修道女の脳から
ノートルダム教育修道女会の678名の修道女を対象として脳を研究した
「ナン・スタディ」という研究があります。80歳から100歳の修道女を詳細に
調査したものです。その中に80代半ばで亡くなったある修道女の事例があります。
この女性は日常生活でも介護など受けず自立しており認知症の兆候など全くない、
という状態の時に心臓発作で他界しましたが、脳を解剖すると、重度の認知症の
状態でした。脳の重さは1020Gでした。1100~1400Gが女性の正常値であり、
認知症では委縮で、1000Gに満たない重さになります。
ところが生前の状態は周囲の誰もまったく認知症の兆候を感じておらず、
奉仕活動を続けて正常人と何も変わることがなかったのです。
この研究から、脳の一部が病理的に変異しても、常に知的な刺激を与えていれば、
認知症になることなく、一生を終えられる可能性が指摘されています。
器質的な脳の状態よりも、その脳をどのように刺激し、訓練し、使いこなすか。
知的刺激と運動の身体刺激を継続すれば脳年齢は若返るということがわかります。
100歳の美しい脳―アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち